性能ラボ
健康と快適を守る最新の空調技術 第6弾「ダイキン工業×ノーブルホーム」 前編

「暮らしをひらく」をブランドミッションに掲げ、高性能な住まいづくりに取り組むノーブルホーム。住宅性能の開発特化チーム「性能ラボ」では、ノーブルホームで採用している建材を連載形式で紹介します。
第6弾となる今回は、空調機器のグローバルリーディングカンパニー、ダイキン工業のショールーム「fuha:TOKYO」(フーハ東京)を訪問。営業開発部 檜垣さん、西川さん、竹田さん、有坂さんにご案内いただき、住まいの快適性を支える空調技術について、性能ラボのメンバー上野絢子・坂上由衣が体感しました。
目次
何かを冷やすときに“フー”と息を吹き、暖めるときには“ハー”と息を吐くという、太古より人間が実践してきた空気のエネルギーを使う行為に由来。人々の生活に密接に関わる“空気”の大切さを知ってほしいという、ダイキン工業さんの思いが込められている。
施設に入ると、まず「空気神社」がお出迎え
空気神社(くうきじんじゃ)について
山形県朝日町に存在する「空気」を御神体とする神社です。空気の恩恵に感謝する心を育む為に建立されました。
私たちの美しい地球を守り、次代へ引き継いでほしいとの思いが込められています。
~ダイキンと空気神社~
さまざまな空調機器からきれいな空気を生み出し、皆さんの生活に寄り添うダイキン工業。
そしてきれいな空気をはじめとした、豊かな自然環境を後世に残そうと願い、建立された空気神社。
「空気」が縁で、ダイキン工業と空気神社の交流は始まりました。
朝日町の条例でも6月5日は「空気の日」と定められており、5日と直近の土日には「空気まつり」が開催されます。ダイキン工業の空調部門の社員も毎年参拝しています。 ダイキン工業も、空気神社周辺の環境整備に力を入れており、参拝に来るお客様に気持ちよく自然を感じてもらえるように協力しています。
エアコンは単なる「家電」ではなく、命を守る「インフラ」
上野「そもそもエアコンというのは、すごい発明品ですよね。電力であそこまで環境を変えられるソリューションは、なかなかありません」
西川さん「そこまでおっしゃっていただけるのはありがたいです。我々としても、これだけ暑さが厳しくなる中で、エアコンは“家電”というよりも“インフラ”になってきていると感じています。エアコンが止まると命に関わるケースもあるため、当社では24時間365日の修理受付体制を確立しています」
健康な住環境を実現する「空気の4要素」
上野「省エネ住宅の普及により、住宅の気密性が高まった現在、室内空気質の管理がより重要になっています。ダイキンさんでは、健康的な住環境を実現するための指標として『空気の4要素』を重要視していると伺っています」
西川さん「ダイキンでは『温度・湿度・空気清浄・気流』という空気の4要素をコントロールすることが大切だと考えています。睡眠環境を整えることも重要ですし、換気や温熱環境も当然必要です」
良質な睡眠に欠かせない湿度コントロール
西川さん「寝室の温度設定に気を遣う方は多いものの、湿度まで意識している方は少ないのではないでしょうか。しかし、質の高い睡眠を得るためには、季節に合わせて温度と湿度両方を適切に管理することが重要です」
夏場の湿度管理が睡眠の質を左右する
上野「日本の高温多湿な夏において、湿度は体感温度や睡眠の質に大きな影響を与えます。同じ温度設定でも、湿度の違いによって快適さは大きく変わるものですか?」
竹田さん「よく『夫婦の温度体感が違うため、エアコンの設定温度で揉める』なんて話を聞きますが、快適性は温度だけでなく湿度によっても変わります。例えば同じ26度でも、サラッとしているのとジメジメしているのでは快適さが違うのです」
従来のエアコンは設定温度に達すると運転を控えめにするため、湿度管理が不十分になることがありました。この課題を解決するのが、ダイキンの「プレミアム冷房」です。
従来のエアコンは設定温度に近づくと能力を絞るため、温度は安定しても除湿がおろそかになってしまいます。プレミアム冷房は冷媒の微調整が得意で、設定温度到達後も除湿能力を継続できます。今までは『涼しいけどなんかジメジメするな』で目が覚めたり、汗ばんだりしたことがあったと思いますが、プレミアム冷房が解決策の一つになるでしょう。
梅雨時の「冷やし過ぎない除湿」という考え方
上野「梅雨時期も湿度コントロールが重要ですが、夏場とは異なる課題が発生します。特に高気密高断熱住宅では『除湿は不十分でジメジメしているのに、温度は下がりすぎて寒い』という問題が起こりがちです」
竹田さん「通常のエアコン冷房だと『すぐに室温が下がり、そのためエアコン冷房が弱運転に移行もしくは停止する。しかし、24時間換気で絶えず外気が入ってくるため、”温度は安定しているが湿度が高い“』という問題が起こりがちです。また、そのような環境下でエアコン冷房で除湿をしようとすると設定温度を下げざるを得ないため、『温度が下がりすぎて寒い』という問題も起こります。
竹田さん「この解決策が『再熱除湿』です。一度空気を冷やして湿気を取り除いた後、再び温めて室内に送り出す技術で、寒くなりすぎず十分な除湿ができます」
再熱除湿の課題は、電気代です。「冷やして温める」という二重のエネルギーが必要なため、電気代が高くなってしまうのです。この課題に対して、AIが最適な除湿モードに制御する技術も搭載することで、省エネも考慮しています。
温度や湿度に合わせて熱交換器の冷やす面積を可変することで、『室温低下を抑えて除湿』が可能です。また温度が安定しているが湿度が高いという時は再熱除湿も取りいれることで、『室温をなるべく維持して除湿』も可能となっております。このようにエアコンが自動で除湿コントロールするため、快適性と電気代のバランスを取れるのが大きな特徴です。
冬場の過乾燥が健康に与える影響と対策
竹田さん「一方、冬場の過度な乾燥も健康に大きな影響を与えます。適切な湿度を保つことで、ウイルス感染予防や呼吸器系の健康維持に重要な役割を果たします」
上野「特に高気密高断熱住宅では、冬場の過乾燥も大きな問題ですよね。満足のいく加湿をすると、電気代がかさむという問題もあります」
竹田さん「冬場の加湿はすごく難しいです。24時間換気に加えてトイレや浴室の第三種換気もあるので、いくら調湿しても乾燥気味になってしまいます。特に冬場、外気との温度差が大きいと、空気の流れが発生するので、水分も外にどんどん出ていきます」
この問題に対して、ダイキンではさまざまな加湿ソリューションを提供しています。うるさらXの無給水加湿システムはその一つですが、住宅の広さや地域の気候によっては追加の対策も必要になります。
西川さん「外気の湿度が低い地域や広い住宅では、加湿器との併用や室内干しなど、住まい方の工夫もご提案しています」
実際の住宅における換気の課題
上野「コロナ禍で大きな注目を集めるようになったのが、室内の二酸化炭素濃度です。CO2濃度が高くなると集中力の低下や頭痛などの症状が現れたり、睡眠の質が低下したりすると言われています。さまざまな場所でCO2濃度測定をしていますが、子ども部屋では20分で3000ppmを超えるなど不十分なケースが少なくありません。特に就寝中は窓を閉め切った状態になりがちなため、睡眠環境を考える上でも換気が重要です」
西川さん「うるさらXは、外から空気を取り込んで冷やしたり除湿したりするため、エアコンでありながら換気機能も備えています。窓を開けなくても外から空気を取り入れるので、子ども部屋や寝室で活用していただくのもおすすめです」
前編では、空調技術が単なる温度調節だけでなく、湿度管理や換気など、住まいの快適性と健康性に深く関わっていることを理解できました。後編では、これらの理論を具体的に実現するダイキンの製品技術について、ショールーム「fuha:TOKYO」(フーハ東京)での体感レポートを通じてご紹介します。